大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和32年(オ)375号 判決 1958年9月11日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人転馬作次郎の上告理由第一点、第二点について。

所論は原審の適法にした証拠の取捨、事実の認定を非難するに帰し、適法な上告理由とは認められない。

同第三点について。

特別都市計画法(昭和二一年法律一九号)一四条三項に「換地予定地に建築物その他の工作物が存するとき」とは、換地予定地指定の通知当時において建築物その他の工作物の存するときをいうものと解するを相当とする。原審の確定するところによれば、本件土地は指定通知の当時空地であつたというのであるから、所論のように別に使用開始の日を定めることをしなかつたことは何ら違法ではない。所論はこれと異なる独自の見解に立つて原判決の違法をいうものであつて、採るを得ない。

同第四点について。

換地予定地の指定の通知があつた場合、その換地予定地の全部又は一部につき、従前の土地に存する権利の内容たる使用収益と同じ使用収益ができる(前記法律一四条一項)。従つて、従前の土地に所有権の存する場合においては、換地予定地に対する使用収益権は所有権と同一の内容を有すると共に、第三者が権原なくしてこれを不法に占有する場合には、これに対し所有権にもとづく物上請求権と同様の権利を行使し得るものと解すべきである。しからば、本件の場合において、建物収去、土地明渡請求をなしうることは当然といわなければならない。そして、本件換地予定地が、換地指定通知の当時空地であつたことは原審の確定したところである。しかるに所論は、これと異なる見解および事実関係を前提として原判決の違法をいうものであつて採るを得ない。なお、所論は違憲をいうが、被上告人の本訴請求が権利の濫用と認むべきものでないことは原審判示のとおりであつて、違憲の主張は前提を欠き採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 高木常七)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例